震災から3年以上が経って、被災地の取り組みも中長期的な視野に立った取り組みが増えてきています。
今回ご紹介する林業スクールもその一つ。地域資源を活かした雇用創出、産業振興に向けた人材育成の取り組みです。林業振興に留まらず、様々な分野の地域全体への波及効果もあると感じました。
11月30日(日)に開校記念講座が開催され、基調講演とパネルディスカッションがありましたが、今回は基調講演の内容を中心にお伝えします。
民間主導の釜石・大槌バークレイズ林業スクールとは
釜石地方森林組合が、バークレイズグループの支援をうけて開設。ただ木を切るだけの作業員ではなく、森林とつながる分野についても理解を深め、地域資源である森林を活かし、地域づくりに貢献できる人材を育成するものです。
完全な民間主導の森林・林業に関わる体系的な人材育成は全国でもたぶん初めて。(しかも、今回バークレイズグループの支援で受講無料)
カリキュラムは、2つの柱で進みます。
- 主に林業従事者などの現場に携わる方向けの10名程の少人数で講義と実習が組み合わさった「実践編」
- 間口の広い一般向けの「オープンセミナー」
講師の方々は、国内でもそれぞれの分野で一流の方ばかりです。リーダーシップやコミュニケーション、マーケティング、女性の職場での活躍などいわゆる林業現場以外のテーマも盛り込まれています。
実践編は、通年参加が原則ですが、オープンセミナーは、1回から参加できるようです。
僕自身、大学は農学部の森林・林業が専攻でしたが、大学内で実際にチェーンソーを触ったのはたったの1回、しかも数分。(大学以外で、ばりばり使っていましたが)もちろん間伐も実際にやる機会はありません。なかなか現場の実践がない中で、講義だけ聴いても理解するのは難しいという実感があります。
なので、学生時代にこの林業スクールがあったら、きっと通っていたと思います。(都合が付くときは、こっそりスタッフとして潜り込みます。)
現在まで決まっている具体的なカリキュラムと実践編の募集要項は、以下のPDFをご覧下さい。
実践編の締め切りは、12月20日となっています。
開校記念講座 基調講演 「人が育って、はじめて地域が継続できる」
開校記念講座の基調講演は、釜石地方森林組合の参事の高橋幸男さん。
震災後、一度は解散も考えていた森林組合を立て直して、林業を通して地域に貢献していきたいと語る、若手職員も慕う人徳のあるリーダーです。
講演で心に残った部分を以下に記します。
人が育って、はじめて地域が継続できる
地域の森林資源は、資源量、雇用、環境の3つ面で可能性がある
森林組合の考える人材育成
- 当たり前のことができる → 挨拶、人前で自分の意見を言える
- 組織・自分の実力が分かる → 組織の持続性
- 目標を立てる → 作業へのモチベーション
- 工夫ができる → 失敗も工夫、現状に満足したい
- 改善ができる → 失敗を踏まえ目標達成に取り組む
課題
- 森とのふれあいの減少 → 森林の基礎知識の低下
- 資産価値の低下(森林) → 所有者の担い手不足
- 生業としての経営力 → コミュニケーション、リーダーシップ
- 消費者ニーズの取得 → マーケティング力
- 人口減就労年齢層減少 → 性別よりも性格、能力/Iターン、Uターンの醸成
- 新技術の活用 → 使い方でなくて、使いこなす情報分析力
課題の部分で少し補足すると、「性別よりも、性格、能力」の部分は、一部ではやっている林業女子を増やそうということではなく、男性・女性の性別を越えたところで、人としての力や資質をとらえていきたいとのこと。
一つ目の「人が育って、はじめて地域が継続できる」の部分は、全くの同感で、三陸ひとつなぎ自然学校で取り組んでいる子ども対象の事業は、まさに地域の未来の担い手の育成と定義しています。
課題についても、三陸ひとつなぎ自然学校でも担える部分がありますし、釜援隊としても、各現場をつないでいく中で解決に資することができます。
例えば、今回の林業スクールは林業現場に携わる方が主な対象者ですが、地域資源の森林と考えたときに、その対象は、地域に住む人々となります。三陸ひとつなぎ自然学校で以前から取り組んでいる森をフィールドとした子どもキャンプや森のようちえん等の取り組みは、課題の一つ目の森とのふれあいに直結しています。
林業スクールを通して、森林林業の現場が様々な分野とつながっていくことで、新しい釜石の地域づくりに資する人材が育っていきます。人材が育っていく中で、林業分野に留まらず、関連する分野にもその波及効果が及んでいきます。
さらにいうと、釜石は海のまちというイメージが強いかも知れませんが、実は約9割が森林なので、森林・林業を中心に据えた地域づくりも可能です。
僕自身も林業スクールの動きと連携しながら、釜援隊の活動を展開していきます。
シンポジウムのパネラーの一人、内田さんの著書。
北欧の人材育成の事例を読むと、やっぱりそこに手間暇かけることの重要性を感じます。
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