被災地に来られたことがあってもなかなか仮設住宅の中に入ることはないかと思います。
仮設住宅に1年以上住んでみての実感をお伝えします。
問題その1 音が響く
一番の問題は、これだと思います。上の写真にあるように、数軒が連なっています。
隣の世帯の音が響きます。夜トイレに行く歩く音や水を流した音なども聞こえてきますし、
隣で掃除機を掛けているとか、電話で話している(内容までは分かりません)とか生活の様子が分かるぐらいです。
仮設の前を歩きながら話しているとその声も部屋の中に響いてきます。
子どもが泣き叫んだり、泣き叫ばなくても家の中で動き回って遊んだりしていれば、その音ももちろん隣に響きます。我が家も3歳の子どもがいますので子どもがいる家庭が日常どんな感じかよく分かりますが、小さなお子さんがいる家庭は子どもも親も周りに気を遣いながら日々過ごしていることが、簡単に想像できます。(幸いにも我が家は一番端の部屋で、隣が空室なので、それほど気を遣わず済んでいます。)
毎日、声や感情を押し殺しているので、実際に仮設の子ども達と活動していると無意識のうちに自分の何かやりたいという思いにストッパーを掛けている感じを受けます。
問題その2 断熱の性能が弱すぎる
寒気が流れ込んできて、本格的な寒さが訪れています。仮設の断熱性能はすごく脆弱でこの時期は朝起きると部屋がキンキンに冷え込んでいます。
床の断熱も弱く、足元から冷えます。床だけじゃなくて上を見ると…
天井と壁の間は、テープで目張りしてあります。先日別の部屋でなんか冷気が降りてきてると思ったら、この目張りの一部がはがれていました。
テープで目張りしているのには、最初、仮設に入った時にびっくりしました。
外部と面している壁は、鉄板。マグネットを使った娘のいい遊び場所になっていますが、冷たさが半端ない。
部屋の仕切りはアコーディオンカーテン。下には、7-8cmぐらいの隙間があって、冷気が入り込んできます。
冬も寒いのですが、断熱性能が弱いので、夏は室内がむちゃくちゃ暑くなります。夏の天気がいい日とか室内にいられません。
部屋の中でデスクワークしてられなくて、野外用の折りたたみのイスを持ち出して、日陰でパソコンいじったりしています。
仮設団地は、建物がずらっと並んでいて、風通しが悪いので、窓を開けていてもなかなか風が入ってきません。
寒さ、暑さもストレスですが、ストーブやエアコンなどまだ対処ができます。しかし、最初に挙げた防音の性能については、なかなか厳しいと実感しています。
仮設のトリセツ実践編(問題の対策)
「仮設のトリセツ」の取り組みを何かの冊子で見たことがあったんですが、色んな工夫をそれぞれがしていて、工作少年だった僕としては、とても興味を持って見ていました。知らなかったのですが、仮設のトリセツは調べてみたらウェブサイトもあるし、本もあるんですね。
自分で工夫しながら、快適な暮らしをつくるという意味でも、工夫している内容そのものも、仮設に限らず、アパートや借家でも実践できることがたくさんあります。実際に以前葛巻町にいたときには、元教員住宅に住んでいましたが、色々工夫しながら断熱性能を上げていました。
では、我が家の今の仮設のトリセツの実践をご紹介します。
壁は、先ほど娘の遊び場にもなっていると書きましたが、僕もチラシを貼ったり、マグネット付のフックを付けて、引っかけたり積極的に活用しています。
居間の床はウレタンフォームの1cmぐらい厚さのあるマットを敷いて断熱に。弾力もあるので、足音の低減にもなりそうです。
アコーディオンカーテンは、片側に裾野長いカーテンを引っかけて、冷気を入らないようにしています。
今回、仮設のことを紹介しようと思って写真を撮っていたら、こんなことに気がつきました。
床下の冷気が入ってこないように張っていたシートがボロボロに。
先日、床下の換気口を閉めたのですが、これでは意味がありません。今度何か貼付けて、補修します。
仮設住宅は、あくまで仮設なので、これだけの年数の使用を想定していません。このシートも長期間の耐用がないものかと思います。
場所によっては、湿気がひどくて、床がぶよぶよしているところもあると聞いています。
釜石における被災された方の仮設住宅への入居世帯数のピークと現在を比較するとまだ8割の世帯が仮設住宅に留まっている状況です。
日常ではない仮設住宅での生活が日常になってしまっていて、問題その1でも書いた感情を無意識のうちに抑えている状態を非常に危惧しています。
無意識のうちにストレスをため込んで、そこから様々な問題が発生する原因の一つにもなり得ます。
実際に釜石に来て仮設に住んでみて、そんなことを感じています。もちろんいち早く仮設の暮らしが解消されるのが一番ですが、今できることとして、先ほど紹介した「仮設のトリセツ」のプロジェクトを見たときに感じた、それぞれが工夫をしながら少しずつ暮らしを楽しむということが大切ですね。
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