以前のブログで、地域おこし協力隊と復興支援員のことについて書きました。
こちらの記事では、チャレンジできる環境が大切と結びました。
もちろん、がむしゃらにチャレンジすることも大事ですが、
何も考えずに動いていては思いが空回りしてしまうことあります。
地域おこし協力隊のように都会から地方に移り住んで地域に関わりながら活動する上で大切な視点って、何でしょうか?
復興支援員組織「釜援隊」の設立当初から1年半以上関わってきた経験から考えてみます。
1.地域内のつながり〜現場と人の多様性を活かす
釜援隊は現在14名のメンバーがいます。
10名は、市内の地域づくり団体、観光、産業振興、仮設のコミュニティ支援など多様な現場に派遣され、
4名は事務局で組織経営や市内外連携に携わっています。
毎週全員が集まる定例ミーティングでは、各分野の状況を把握でき、新たな視点が得られます。実際にミーティングでやり取りしている中で、僕が派遣されている三陸ひとつなぎ自然学校で実施している子ども居場所づくりが今後の被災地におけるコミュニティ形成につながることに気付かされました。
また、釜援隊メンバーの前職も様々で商社の営業や広告代理店、銀行員など。まちづくりのテーマは多岐にわたるので、各経験が生きます。例えば、釜援隊を中心に立ち上がった「釜石からの手紙プロジェクト」では、それぞれの強みを活かして、デザイナーとのやり取りや市役所や郵便局との調整、市内の各団体との連携など、役割分担しながら進めました。
このような現場と人の多様性が生み出す釜援隊の取り組みは、復興という枠を越えて今後必要とされる地域課題解決の一つのモデルにつながると感じます。
釜援隊は14名とまとまった人数がいるからできていることもありますが、地域おこし協力隊も同じ市町村で数名配置されていることも多いと思います。定期的な情報共有の場を持ちながら、連携できる部分を模索することで、地域課題解決の糸口が見えたり、解決の速度が速まります。
同じ立場の人がいない場合でも、地域おこし協力隊員内だけではなく、Iターンしてきた人や地域内で同じ思いを持った人を巻き込む方法もあります。先ほど例に挙げた「釜石からの手紙プロジェクト」では2年目を迎え、地元の事業者の方も巻き込みながらプロジェクトの準備に当たっています。
2.地域内外をつなぐ〜地域課題に地域外の力を活かす
東日本大震災から3年以上が経過し現地ニーズは変化しています。瓦礫の片付け等「体」を主に使うことから、根本的な課題解決に向けて技能や知恵、特技など「頭」を使いながら関わることが求めれています。
釜援隊の役割の一つが、外部連携です。例えば、首都圏の企業内の有志から釜石支援の要望がありました。事前打合せで参加者の特性と地域課題をすり合わせて、プログラムを構成。僕の派遣先の三陸ひとつなぎ自然学校のツアーを実際に体験して、フィードバックをもらいました。今回のプログラムを四季を通じて関係性を広げていくという、こちらが全く考えていなかったアイデアがでてきました。地域外の力が地域に根付くには現地組織の存在が不可欠で、そのアイデアも地域でコーディネートする人がいなければ、活かされません。今は、被災地とそうでない地域との関係から始まっていますが、今後は震災という枠を越えて、地域間がそれぞれの特性を活かし合える関係性を構築していくことが重要です。
地域外から地域内に飛び込んだ方は、よそ者としての目線と、地元側の目線と両方を持ち合わせています。地域外のネットワークを活かし、地域に足りない視点を取り入れていくことが求められるはずです。
3.個人の思いでつながる〜セクターを越えて
釜援隊が設立され1年以上が経ち、その大きな成果は、セクターの違いを超えた市内の各組織間の連携体制が構築されたことです。協働でプロジェクト推進などの実務的な連携のみならず、居酒屋での情報交換?で個と個がつながり「良い地域をつくろう!」という思いが共有されています。
地域は個人の集まり。理論より感情が先行します。物事の善し悪しよりも「あいつがやるなら全面的に協力するぜ!」と一人一人の思いが地域をつくります。これまで釜援隊の仕組みを取り上げてきましたが、その仕組みも一人一人の思いがあってのものです。
また、ずっと地元にいると、色々なしがらみで身動きが取れなってしまうこともあります。「AさんとBさんは仲が良くないから…」というような忠告をいただくようなことがあっても、聞かなかったふりをして、それぞれと付き合いながら関係を深くしたり、縁もゆかりもない地方にやってきたよそ者だから構築できる人間関係もあります。
セクターや関わっている分野の違いを取っ払って、個人レベルの関係性を広めることが大切です。
釜援隊の仕組み と 個々の思い の両輪が動き始めた
思いをつなぐ作業は一つ一つ積み上げていくしかないので、外からは変化が分かりづらいですが、釜石では「思い」と「仕組み」の両輪が動き始めました。ツアーや地域づくりの視察研修などで、釜石にいらして下さい。地域外のあなたの「思い」も釜石とつながり、これからの地域のモデルを一緒に創っていきましょう!
釜援隊の仕組みをもっと詳しく伝えます
来年度の釜援隊の隊員の募集の説明会と活動報告が東京であります。
地域おこし協力隊の応募を考えている方もぜひ。
復興と地方創生のあいだ。~釜石リージョナルコーディネーター活動報告・採用説明会@東京~
【日時】2015年2月18日(水) 19:00~20:30(開場18:30)
【場所】ちよだプラットフォームスクウェア(東京都千代田区神田錦町3‐21)
参考情報
以前も紹介したこちらの本。
著者の稲垣さんは、地域おこし協力隊や復興支援員の研修でも講師を務めています。
新潟県中越大震災を機に立ち上がった「地域復興支援員」が原型となって、地域おこし協力隊や復興支援員へとつながっています。
デザインの最前線は地方にあると感じられます。
3.11後のコミュニティのあり方をとらえ直す。
地域とは何か、コミュニティ、共同体とは何か、これらの社会のかたちをどこに求めるべきなのか、そしてその背景にどんな哲学、思想をつくりだす必要があるのか。
それは震災後の復興を考えていく作業でもあり、同時に、いきづまった現代社会をいかに変えていったらよいのかについての考察でもあった。(「はじがき」より)
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